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「遺留分、うち関係ある?」相続トラブルが起きやすい家族の共通点
相続や遺言の話は、できれば避けたいテーマのひとつかもしれません。
ただ、親の高齢化が進んでくると、どうしても考えざるを得ない場面が増えてきます。
ネット検索で「遺言 書き方」「遺留分 トラブル」などを調べている方の多くは、すでに心のどこかで不安を抱えているはずです。
ここでは、まずその不安に寄り添いながら「どんな家族でも相続の問題は起きる可能性がある」という視点から話を始めます。
相続で揉めるのは特別な家だけではない
「うちは仲がいいから大丈夫」
「財産なんて大した額じゃないし」
こうした言葉は、相談のなかでとてもよく耳にします。
ですが、実際には財産の規模に関係なく、相続をきっかけに関係がこじれてしまう家庭は少なくありません。
特に多いのが、遺言があったものの内容の偏りが強く、受け取る側の気持ちと合わなかったケースです。
親としては善意のつもりでも、子どもからすると「こんなはずじゃなかった」と感じてしまい、急に距離ができてしまうこともあります。
遺留分を知らずに書かれた遺言が火種になる
遺言そのものはとても有効な生前対策ですが、遺留分を計算せずに作成してしまうと、後から思わぬ対立を生むことがあります。
「長男が介護で頑張ってくれたから全部あげたい」
「疎遠な子には渡したくない」
こうした気持ちは理解できますが、法律には最低限の取り分である遺留分が定められています。ここを見落としてしまうと、遺産分割の段階で他の相続人が強く反発し、さらには裁判手続の方向へ進んでしまうことも。
読者の方にお伝えしたいのは、遺留分の問題は悪意ではなく「知識不足」から起こることが多いという点です。誰が悪いというより、仕組みを知らなかっただけというケースがほとんどなのです。
親の判断能力と遺言の関係に潜む落とし穴
ご相談で増えているのが「認知症が少し進んできた頃に書かれた遺言」に関する悩みです。
字が書けなくなるほどではなくても、判断能力が十分でなかったのではないか、と後に疑われる可能性があります。
実際に、子ども同士の意見が食い違った時には、この「遺言が本当に有効なのか」という点から争いが始まることがあります。
判断能力の問題は、専門家でも慎重に見極めるポイントです。
「元気なうちに考えておけばよかった」という声は、本当によく聞きます。
遺言・相続・成年後見はつながったテーマ
相続は「いつか来るもの」というイメージがありますが、実際には遺言の作成時期、親の健康状態、後見制度の利用可否など、多くの要素が重なっています。
例えば、
・親が認知症で判断能力が低下すると遺言の作成が難しくなる
・成年後見制度を利用している場合、財産の使い方に制限がかかる
・遺産分割や相続登記のタイミングで手続が停滞する
このように、どれか一つだけを考えれば済む話ではありません。
だからこそ、早めの情報収集と準備が大切です。
遺言がきっかけで争いに発展するパターンと、なぜ起きるのか
遺言は、本来なら家族がスムーズに相続できるようにするための準備です。
ところが、内容によっては想定しなかった不満や誤解を生んでしまい、結果として「争いの種」になってしまうことがあります。
ここでは、よく相談で出てくるパターンを取り上げながら、なぜトラブルにつながるのかをわかりやすく整理していきます。
一人に集中して遺産を渡す内容は、想像以上に衝撃が大きい
まず代表的なのが「特定の相続人に遺産を集中させる遺言」です。
親としては感謝や事情があっての判断かもしれません。
例えば
・介護を担った子だけに多めに渡したい
・同居してくれた子にほとんど任せたい
・疎遠な子には遺産を残したくない
このような思いは決して珍しくありません。
ただ、遺言を開いた他の家族からすると「自分は軽く見られたのか」「なぜ相談してくれなかったのか」と受け止められてしまいがちです。
ここに遺留分の知識が絡むと、さらに歪みが大きくなることがあります。
遺留分を無視した遺言は、予想以上に強い反発を生みやすい
遺留分は、親子・配偶者などの近い家族に保障されている最低限の取り分です。
相続人がその存在に気付いていないと、遺言の内容に大きな偏りがあった際に「自分の権利が侵害された」と強く感じてしまいます。
相談で多い声としては
・「介護していないからと言って、ほとんどもらえないのは納得できない」
・「母が本当にこの内容を望んでいたのかわからない」
・「説明なしに偏った分け方をされるのは不安」
といったものがあります。
遺留分は決して多い額ではないのに、心理的にはとても大きな意味を持つ点が特徴です。
判断能力が不安定な時期に作られた遺言への疑念
次に増えているのが、判断能力が万全ではなかった時期の遺言を巡る対立です。
親が高齢になり、軽い認知症の症状が出てきた頃は、本人も家族も「まだ書けるはず」と考えがちです。
しかし、後から子ども同士で意見がぶつかると、「本当に意志を確認できる状態だったのか」というところから争いが始まります。
特に、
・遺言の内容が急に偏った
・家族の誰も知らないタイミングで作られた
・以前の内容と大きく矛盾している
といった場合は、疑われる可能性が高くなります。
結果として、家庭内の不信感が深まり、調停や裁判に進むケースも少なくありません。
書き方や形式の不備で「そもそも遺言が無効」というトラブルも
もう一つ意外と多いのが、形式的なミスによる無効です。
例えば
・日付が抜けている
・署名が本人のものか判断しづらい
・訂正の仕方に誤りがある
・保管方法が適切でなく、内容の信用性が疑われる
自筆証書遺言は手軽な反面、細かなルールを知らないと後で有効性を争われる可能性があります。
「せっかく準備したのに使えない」という事態は、家族の負担を一気に増やしてしまいます。
家族関係の微妙なバランスが一気に崩れる瞬間
相続は、財産の金額よりも「気持ち」が強く影響します。
普段は穏やかな家族でも、遺言の内容によっては急に距離ができることがあります。
特に
・兄弟間での寄与度の差
・親との関わり方の違い
・過去のわだかまり
などが、遺言をきっかけに一気に表に出てくることが少なくありません。
専門家としてお伝えしたいのは
「遺言の内容が悪いわけではなく、事前の準備や説明が不足すると誤解が起きやすい」
ということです。
遺留分とは何か?市川で相談が多い質問とあわせて制度を整理
遺言をめぐるトラブルで最も多いのが、遺留分に関する誤解です。
「聞いたことはあるけれど、何となくしか分からない」という方も多いのではないでしょうか。
ここでは、難しい式を使わずに「結局どれくらいの取り分があるのか」「誰に関係するのか」をやさしく整理していきます。
遺留分は仲の良さとは、関係なく決まっている最低の取り分
遺留分とは、特定の相続人に保障されている最低限の取り分のことです。
家族の仲がどうであっても、相続人が請求すれば取り戻せる割合が法律で決まっています。
対象となるのは
・配偶者
・子ども
・直系尊属(親)
反対に、
・兄弟姉妹は対象外
です。
ここを誤解して「長男に全部渡すと書いてしまった」というケースはとても多く、のちに他の家族が強い不満を抱くきっかけになります。
どのくらいの割合なのかをシンプルにイメージする
難しい計算例の前に、まずは割合のイメージを持つことが大事です。
遺留分の割合は、相続財産のうち
・子どもと配偶者が相続人の場合は全体の半分
・直系尊属のみが相続人の場合は全体の三分の一
これをさらに各相続人で分ける仕組みです。
たとえば財産が2,000万円で、相続人が配偶者と子ども2人の場合。
全体の半分である1,000万円が遺留分の基礎となり、それを法定相続分に応じて配偶者と子どもで分ける形になります。
具体的な金額は家庭によって異なりますが、
「遺留分は、遺産の半分程度がベースになる」
という感覚を持っておくと理解しやすくなります。
市川市内でも多い質問「うちは少額の財産でも関係するの?」
結論として、関係します。
財産が多くても少なくても、遺留分は法律上ある以上、請求があれば無視はできません。
市川エリアでの相談でも
・不動産は自宅のみ
・預金はそこまで多くない
といったケースが多いのですが、このような家庭でも遺留分を巡る対立は普通に起こり得ます。
特に不動産が中心の場合は、
「売るのか住み続けるのか」
「誰が固定資産税を負担するのか」
といった問題に発展しやすく、遺留分の請求は強い影響力をもちます。
遺留分侵害額請求には期限がある
意外と知られていないのが、遺留分侵害額請求には期限があるという点です。
期限を過ぎると、どれだけ偏った内容の遺言でも請求ができなくなります。
期限は
・遺留分侵害を知ってから1年以内
・相続開始から10年以内
この2つです。
特に、相続があっても家族関係が遠くて遺言を見ていなかった場合などは、気付いた時にはギリギリということがあり得ます。
「遺言の内容に違和感がある」「自分の取り分があるのか分からない」
そんな方は、早めに確認することが大事です。
遺留分と遺産分割・相続登記の関係
遺留分は遺産分割とは別ルートの制度ですが、実務上は密接に関係します。
例えば
・遺産分割の話し合いが進まない
・不動産の相続登記ができない
・遺産分割協議書を作れない
といった局面で、遺留分の話が突然持ち上がることがあります。
家族がそれぞれの立場で主張するため、冷静な調整が必要になることが多いテーマです。
遺留分を考えるとき大事なのは「金額」より「気持ちの整理」
遺留分は、法律の話でありながら、実際には家族の感情が大きく影響します。
「介護を頑張ったのに評価されない」
「兄弟の誰かだけが得をしている気がする」
「親の遺志を尊重したい」
こうした思いが交錯し、対立が深まることがあります。
この記事を読んでいる方には、単に計算するのではなく、
「どうすれば争いを避けられるか」
という視点も合わせて持っていただけたらと思います。
裁判沙汰になる前にできる生前対策
遺言・家族信託・成年後見の使い分け
遺留分の計算や遺言の内容が原因でトラブルになるケースは、決して珍しいものではありません。
ただ、事前に少し工夫するだけで、将来の対立をかなり減らせる場面が多いのも事実です。
この章では、遺言・家族信託・成年後見という三つの仕組みをどう使い分けるかを、初心者の方でも理解しやすいように整理します。
遺言だけでは万全にならないことがある
まず押さえておきたいのは、遺言は「亡くなった後の分配」を決める制度であり、「生きている間の財産管理」まではカバーしきれないという点です。
例えば
・認知症が進み、預金が凍結されてしまう
・不動産の売却など、生活上の判断ができなくなる
・介護サービスの契約に家族が困る
こうした問題は遺言では解決できません。
そのため、遺言が必要なご家庭ほど「認知症になる前の準備」もセットで考える必要があります。
家族信託は柔軟な管理ができ、遺言と相性が良い
家族信託は、生前の財産管理を家族に任せるための仕組みです。
認知症への備えとして検討されることが増えており、遺言と並ぶ大きな選択肢になっています。
特徴としては
・判断能力が低下しても、契約内容に従って柔軟に財産管理できる
・不動産の管理や売却について家族がスムーズに動ける
・受益者の設定により、亡くなった後の財産の行き先まで指定できる
といった点があります。
ただ、遺留分を完全に避けられるわけではないため、「信託にすれば遺留分の問題が消える」と誤解されないよう注意が必要です。
実際には、遺言と組み合わせることで、争いが起きにくい形に整えることができます。
成年後見は必要な場面が限られているからこそ、知っておく価値がある
成年後見制度は、判断能力が低下した方の財産管理を支える制度です。
ただし、「いつでも誰でも自由に使える制度」というイメージは誤解に近く、実は利用のハードルも運用の制限も少なくありません。
具体的には
・後見人は家庭裁判所の監督下で行動する
・財産の使い方に制約がある
・自宅売却などは裁判所の許可が必要
といった特徴があります。
そのため、成年後見は「緊急時に必要になる制度」と考えておくと分かりやすく、日常の財産管理をより柔軟にしたい場合は家族信託を検討するのが自然な選択になります。
どれか一つを選ぶより、組み合わせることでトラブルは減らせる
遺言・家族信託・成年後見は、それぞれ役割が違います。
いちばん大事なのは「どれか一つだけで完璧にしようとしない」ことです。
例えば
・元気なうちは家族信託で柔軟に管理
・亡くなった後の分配は遺言で指定
・判断能力が著しく低下して手続が必要になったら成年後見を補助的に活用
というように、時間軸に合わせて組み合わせると、より安心できるプランになります。
相談ではよく
「家族信託があれば遺言はいらないですよね?」
「成年後見を申し立てれば、生前対策は全部できるんですよね?」
といったご質問をいただきますが、それぞれが得意とする範囲は異なります。
大切なのは「どの制度が自分たちの家庭に合っているか」を把握することです。
家族を巻き込みながら準備することで、遺留分の衝突は起きにくくなる
生前対策の核心は「制度そのもの」ではなく「家族との共有」です。
内容が秘密のままだと、遺言を開いた瞬間に家族が驚き、そのまま対立に発展することがあります。
反対に
・親の思いを確認しながら準備する
・誰が何を担当するか整理しておく
・不動産の管理方針を話しておく
このような事前のコミュニケーションがあると、遺留分の問題も穏やかに調整しやすくなります。
市川でも、こうした「早めの話し合いをしていたご家庭」は、手続がスムーズに進む傾向があります。
後悔しないためのチェックリスト
まず確認しておきたい6つのポイント
ここまで、遺言が原因でトラブルに発展する理由や、遺留分をめぐる制度のポイント、生前対策の考え方を整理してきました。
最後の章では、「今日からできる準備」として、実際の相談でもよく確認いただく6つのポイントをチェックリスト形式でまとめます。
専門知識がなくても判断しやすい内容にしていますので、自分の家庭に当てはめながら読み進めてみてください。
遺言の内容に極端な偏りがないか
まず確認したいのは「遺言のバランス」です。
遺言は自由とはいえ、特定の相続人に大きく偏った内容は、どうしても誤解を生みやすくなります。
例えば
・一人の子だけにほとんどすべてを記載してしまう
・介護の負担があった子に集中させたい気持ちが強すぎる
・疎遠な家族を外したい意図をそのまま書き込む
こうした内容は、いざ遺言を見た家族に強い衝撃を与えるケースがあります。
偏りそのものが悪いわけではありませんが、遺留分の知識や家族への説明が不足していると、対立が起きやすくなります。
相続人同士の関係性はどうか
「うちは大丈夫」と思っているご家庭でも、いざ相続が始まると想像以上に感情が動くことがあります。
兄弟姉妹の関係性、介護の分担、実家との距離、親との関わり方など、家庭ごとに背景はさまざまです。
特に、
・日頃あまり連絡を取っていない
・何となく気まずい関係が続いている
・価値観が大きく違う
こうした環境がある場合は、遺言の内容をどう受け止めるかが家族によって大きく異なることがよくあります。
事前に関係性を整理しておくことが、最終的なトラブル回避につながります。
認知症の進行具合や判断能力をどう見ているか
遺言は「判断能力があるうち」にしか作れません。
そのため、親が高齢になってきたら、判断能力に関する認識を家族で共有しておくことが大切です。
相談で多いのが、
・軽い物忘れが出てきた
・一部の判断があいまいになってきた
・でも本人はまだはっきりしているつもり
こうした時期に作成された遺言が、後に「本当に有効なのか」と疑われるケースです。
遺言作成のタイミングは後回しにしがちですが、実は「早めの一歩」が家族の負担を大きく減らします。
不動産や預金の管理状況を整理しているか
多くの家庭では、不動産が相続トラブルの中心になりがちです。
市川エリアでも、不動産の割合が大きい相続は珍しくありません。
確認したいのは
・現在の名義が誰なのか
・売却して良いのか、住み続けたいのか
・管理を誰が担うのか
・固定資産税の負担はどうするのか
こうした点です。
預金も同じで「どこに、いくらあるのか」が家族に共有されていないと、探すだけで時間がかかり、遺産分割が進まなくなることもあります。
遺産分割・相続登記・後見制度の利用を想定しているか
相続手続は、相続税や登記手続、後見制度など、複数の制度が重なっています。
そのため、遺言の内容を決める際には、これらの手続との相性も考えておく必要があります。
例えば
・不動産の相続登記を誰がするのか
・後見制度を利用した後に遺言が必要になるケースがある
・家族信託を組むと、相続登記がスムーズになる場合がある
このように「遺言一本」で完結する家庭ばかりではありません。
複数の制度をセットで考えることで、後から慌てるリスクを減らすことができます。
※登記に関する申請手続きは、法律により 司法書士の独占業務と定められています。 そのため、当事務所で登記申請の代行を行うことはできませんが、 提携している司法書士事務所と連携し、必要な制度案内や専門家のご紹介 を行うことは可能です。
家族で話し合う時間を確保できるか
対策の核心は「制度」ではなく「共有」です。
遺言がどれだけ丁寧に作られていても、誰にも内容を告げずに保管しておけば、亡くなった後に家族が驚き、遺留分の問題が浮上することがあります。
反対に
・親の希望を早めに聞いておく
・不動産や預金の情報を軽く共有する
・家族信託や後見制度について、最低限の理解を揃えておく
こうした対話がある家庭ほど、相続手続が落ち着いて進む傾向があります。
時間を取って話すのは気まずいかもしれませんが、その一歩がトラブル回避には欠かせません。

