親の通帳を預かっているけど、これって大丈夫なの?

親の通帳を預かっているけど、これって大丈夫なの?

親への優しさが、いつの間にか不安に?

「お母さんが足腰弱って銀行に行くのが大変そうだから、私が代わりにお金をおろしているんです」
「最近、お父さんに物忘れの気配があって、通帳や印鑑をなくしそうだからとりあえず預かっています」

親御さんの通帳やキャッシュカードを預かるきっかけって、こんな風に、ごく日常のちょっとした「助け合い」から始まりますよね。一番近くにいるお子さんとして、困っている親を助けたいという優しい気持ちからスタートしたはずです。

でも、数ヶ月、数年と親の代わりにお金の管理を続けているうちに、ふとした瞬間に冷や汗をかくような不安に襲われることはありませんか?

「これって、はたから見たら私が親のお金を勝手に使っているように見えないかな?」
「もし親に万が一のことがあった時、他の兄弟にお金の使い道をどう説明すればいいんだろう?」
「そもそも、親のキャッシュカードを使って子どもがお金をおろすのって、法律的にOKなの?」

そのモヤモヤ、実は「大正解」

実は、意外と多いのがこの「親の通帳を預かって管理しているけれど、なんとなくモヤモヤして不安」というお悩みなんです。

行政書士の目線から言わせていただくと、あなたが今感じているその「なんとなくの不安」は、とても正しく、そして鋭い感覚です。むしろ、今の段階でその不安に気づけたのは本当にラッキーだったと思うんです。

なぜなら、そのモヤモヤを見て見ぬふりをして自己流の管理を続けてしまうと、将来的にご家族との修復不可能なトラブルや、銀行での思わぬストップ、さらには税金の問題にまで発展してしまう可能性が十分にあるからです。

今日は、親御さんの通帳を預かっているあなたが、余計なストレスを抱えずに安心して親孝行を続けられるように、知っておくべきリスクと今日からできる対策を、できるだけわかりやすくお話ししていきます。

【事例1】ある日突然、兄弟から疑いの目が…

まずは、私たちが実際にご相談を受ける中で、しばしばお伺いするトラブルのケースをご紹介します。

長男のAさん(50代)は、実家で一人暮らしをしているお母様(80代)の通帳とキャッシュカードを預かっていました。お母様は膝が悪く、バスに乗って駅前の銀行に行くのが負担になっていたからです。

Aさんは月に一度、お母様に頼まれた生活費をおろし、ついでにスーパーで日用品の買い出しをして実家に届けていました。もちろん、Aさん自身はお母様のお金を1円たりとも自分のためには使っていません。

むしろ、買い出しに行く時のガソリン代や、ちょっとしたお菓子などはAさんの持ち出しでした。お母様の生活をしっかり支えているという自負があったんです。

善意が「使い込み」に変わる日

ところが数年後、お母様が亡くなり、遺産分割のために兄弟で話し合いになった時のことです。離れて暮らす妹のBさんが、お母様の通帳の引き出し履歴を見て顔色を変えました。

「お兄ちゃん、毎月10万円もおろしてる記録があるけど、お母さんのつつましい一人暮らしでそんなにかかるはずないよね? もしかして、自分のために使い込んでない?」

Aさんは慌てて反論しました。「違うよ、お母さんに頼まれておろして、現金で手渡ししてたんだよ。残った分は実家のタンスに入ってるはずだ」 しかし、実家を整理しても、タンスの中には数万円しか残っていません。お母様が残りの現金を何に使ったのか、あるいはどこかにしまい忘れたのか、亡くなってしまった今となっては確かめる術がないというワケです。

「証拠がない」ことの怖さ

「証拠がないじゃない! お兄ちゃんが自分の住宅ローンにでも充てたんじゃないの?」とBさんは疑いの目を向け、結果的に兄妹の仲は修復不可能なほどにこじれてしまいました。

これ、決してドラマの中だけの話ではなく、ごく普通の家庭で頻繁に起きている悲しい現実なんです。Aさんは完全に善意で動いていました。でも、「客観的な証明」を残していなかったばかりに、一番身近な家族から疑われてしまったんですね。

親のお金を管理するということは、どんなに真面目にやっていても、こういう「見えないリスク」と常に背中合わせだということを、まずは知っておいていただきたいなと思うんです。

2026年の銀行事情・窓口のチェックが厳しくなっている現実

家族間のトラブルと同じくらい怖いのが、銀行などの金融機関の対応です。皆さん、最近銀行の窓口に行かれて「なんか昔より色々と厳しくなったな」と感じたことはありませんか?

2026年現在、金融機関におけるマネーロンダリング対策や、特殊詐欺(オレオレ詐欺や還付金詐欺など)への防犯対策は、デジタル化の波とともにさらに厳格化しています。それに加えて、高齢者の財産保護という観点から、口座名義人ご本人以外の取引に対するチェックの目は、私たちが想像する以上に厳しくなっています。

一般的なイメージでは、「家族なんだし、キャッシュカードと暗証番号さえ知っていれば、ATMでいつでもおろせるから大丈夫でしょ」と思われがちですよね。

確かに、数万円程度の少額をATMで引き出す分には、今はまだスムーズにできているかもしれません。でも、たとえば親御さんが介護施設に入居することになって、まとまった入居一時金やリフォーム代など、数百万円単位のお金が必要になったとします。

避けられない「本人確認」の壁

ATMの引き出し限度額を超えてしまうため、あなたが窓口に行って「母の代わりにお金をおろしたいんです。私が息子の〇〇です」と伝えたとしましょう。その瞬間、銀行員さんは必ず「ご本人様の意思確認が必要になります」と対応します。

もしその時、親御さんの認知機能が低下していて、銀行からの電話確認に対して「はい、私が息子におろすよう頼みました」とはっきりと受け答えができなかったら、どうなるでしょうか。

ある日突然、口座が凍結される!?

その時点で、銀行が「本人の意思能力が確認できない」と判断した場合、取引が制限され、事実上、口座から資金を動かせなくなる可能性があります。

一度取引が制限されると、いくら実の子供であっても、たとえ親自身の介護費用であっても、追加の確認手続きを経ないと引き出しが難しくなります。

「親の口座にお金があるから、介護費用はそこから出せば安心」と思っていたのに、いざという時に使えない。結局、子どもが自分のなけなしの貯金を切り崩して、親の施設代を立て替え続けることになってしまった……というご相談も、ここ数年で急増しています。

ただ通帳とカードを預かっているだけの状態は、今の時代、決して「安心」とは言えない現実があるんです。

【事例2】税務署は見てる? 親のお金と自分のお金が混ざるリスク

もう一つ、知っておくべき厄介なリスクについてお話しします。今度はご家族や銀行ではなく、「税金」が絡むお話です。

同居している長女のCさん(60代)は、お父様(80代)の年金が振り込まれる通帳を管理していました。Cさんは「家計を一つにしたほうが、いちいち計算しなくて済むし管理がラクだから」と、お父様の口座から毎月定額を自分の口座に振り込みで移していました。

そして、自分の口座から実家の光熱費や食費、お父様のデイサービス代などをまとめて払っていました。さらに、お父様から「お前には日頃から世話になっているから、少し多めに移して自分のために使いなさい」と言われ、お小遣いや生活の足しとしてもらっている分も含まれていました。

悪気はなくても「贈与」とみなされる!?

数年後にお父様が亡くなり、ある程度の財産があったため相続税の申告が必要になった時のことです。税務署の調査官から厳しく指摘されたのは、あの「Cさんの口座に毎月移していたお金」でした。

税務署の言い分はこうです。

「Cさんの口座に毎月移されていたお金のうち、お父様のための生活費や医療費に使ったと明確に証明できない部分については、事情によってはお父様からCさんへの『贈与』と判断される可能性があります。贈与税の申告はされていますか? あるいは、実質的にはお父様の財産(名義預金)として、今回の相続税の対象に含める必要がありますよ」

Cさんは「いやいや、ほとんど生活費として使いましたし、お小遣いはお父さんから口頭でもらっただけです!」と主張しました。

しかし、何年前のどの支払いが親のためで、どれが自分のためだったのか、領収書もメモも一切残っていませんでした。「親のお金」と「自分のお金」が、ひとつの口座の中で完全に混ざりあい、どちらのお金か判別できない状態です。

お金の動きには「ちゃんとした理由」が必要

結果として、Cさんは客観的な証明ができなかったため、想定外の税金とペナルティ(過少申告加算税など)を納めることになってしまいました。

家族間のお金のやり取りって、どうしてもルーズになりがちですよね。「親が使っていいって言ったから」で済むと思いがちです。でも、税務署はとてもシビアです。お金の動きにはすべて「理由」があり、それを「第三者に対して客観的に証明できるか」が問われるというワケです。

今日からできる! 疑われないための3つの習慣

ここまで読んで、「じゃあ、どうすればいいの? トラブルになるくらいなら、もう通帳を親に返すしかないのかな?」と不安になってしまったかもしれませんね。

でも、安心してください。すぐに公的な手続きに進まなくても、あなた自身を守るために「今日からすぐに始められること」があります。家族からも、銀行からも、税務署からも疑われないための、3つの習慣をご紹介します。

習慣1・専用の「お小遣い帳」をつける

難しい家計簿である必要はありません。大学ノートでも、スマホの家計簿アプリでも構いません。「〇月〇日、親の口座から5万円引き出し」「〇月〇日、オムツ代として5,000円支払い」といったように、親のお金の出入りだけを独立して記録します。

ポイントは「親の財布」と「自分の財布」を頭の中で完全に分けること。もしあなたが立て替え払いをした場合は、「〇月〇日、立て替え分として1万円を自分に精算」と記録しておきましょう。

習慣2・領収書やレシートは絶対に捨てない

先ほどの出納帳の裏付けとなる「証拠」が領収書です。親の介護用品のレシート、病院の領収書、実家の修繕費……。これらを月ごとに100円ショップのクリアファイルに入れて、放り込んでおくだけでOKです。スーパーのレシートに自分のお菓子が混ざっていたら、親の分だけマーカーで線を引いておけば完璧です。レシートが出ないお祝い金やお見舞い金などは、出納帳の横にメモしておけば立派な記録になります。

習慣3・家族へ定期的に「ガラス張り」の報告を

実は、これが一番重要で効果的な習慣かもしれません。お盆やお正月など、兄弟姉妹が顔を合わせるタイミングや、家族のLINEグループなどで、「今、お母さんの通帳は私が預かっているよ。残高はだいたいこれくらいで、毎月こういうことにお金を使っているよ」と、オープンに見せてしまうんです。

最初は少し面倒に感じるかもしれませんが、人間は「見えない」「隠されている」と思うから疑いを持ってしまうんです。自分からガラス張りにして情報を共有することで、後々の「使い込みトラブル」を未然に防ぎ、「いつも管理してくれてありがとう」という感謝に変わるはずです。

2026年の最新トレンド・「家族信託」と「成年後見」ってどう違うの?

さて、ここまでの3つの習慣は、「親御さんが元気、あるいは少し物忘れがある程度」の段階での有効な自衛策です。

でも、もし親御さんの認知症が本格的に進行してしまい、意思疎通が難しくなってしまったらどうなるでしょうか。

いくらあなたが出納帳をきっちりつけていても、親御さんの判断能力が大きく低下した状態で財産を動かすことは、法律上は「親御さんの同意を欠いた行為」と評価される可能性があり、場合によっては無権代理や不当利得などの問題として争いになるおそれがあります。

そうなる前に、次のステップとして知っておいていただきたいのが、2026年現在の法務トレンドである「成年後見」と「家族信託」の使い分けです。

しっかり守る「成年後見」のメリットと注意点

少し前までは、親の認知症対策、財産管理といえば「成年後見制度」一択という風潮がありました。家庭裁判所が選んだ後見人(弁護士や司法書士などの専門家が選ばれることが多いです)が、親の財産をガッチリ守る制度です。

ただ、この成年後見制度、財産を「守る」ことには非常に長けているんですが、ご家族のために「活用する」ことには不向きなんです。

「親の空き家になった実家を売って、少しでも環境の良い介護施設の費用に充てたい」と思っても、裁判所から「本人の居住環境を守るため」として売却の許可が下りない……といった柔軟性のなさが長年問題視されてきました。また、専門家への報酬が亡くなるまで毎月かかり続けることも、ご家族にとっては大きな負担ですよね。

柔軟に管理できる「家族信託」とは?

そこで近年、選択肢の一つとして利用が増えているのが「家族信託(民事信託)」という仕組みです。

これは、親御さんが元気で意思能力があるうちに、「自分のお金の管理や、実家の管理・売却の権限を、信頼できる子ども(たとえばあなた)に託す」という契約をあらかじめ結んでおく制度です。

裁判所を介さず、家族間で「何のためにお金を使うか」のルールを決められるので、非常に柔軟な運用が可能です。

万が一、親御さんが認知症になってしまった後も、銀行口座が凍結されることなく、あなたが「受託者」として堂々と、合法的に親のお金を引き出したり、必要に応じて実家を売却して介護費用に充てたりすることが可能です。

2026年現在、一部の専門家の間では、「家族信託」と「成年後見」を、事情に応じて使い分ける考え方が広がりつつあります。

つまり、親御さんと意思疎通ができるうちに、家族信託などの制度も含めて検討し、どの仕組みがご家族に合うかを整理しておくことが望ましいと言えます。

安心のゴールへ向かうための3ステップ

親の通帳を預かり、お金の管理をしていくという行為は、実は親御さんが亡くなるまで続く、とても長いマラソンのようなものです。どこに向かって走っているのか、いつバトンを渡せばいいのかがわからないと、不安で精神的に疲れてしまいますですよね。

そこで、あなたが迷わずに安心のゴールへ向かうためのロードマップを整理してみましょう。

ステップ1・現状把握と自衛

今まさに通帳を預かっている状態なら、まずは先ほどお話しした「お小遣い帳をつける・領収書を保管する・家族へ報告する」という3つの習慣を始めましょう。これがすべてのトラブルを防ぐ基礎体力づくりになります。

ステップ2・意思確認と見守り

親御さんが元気なうちに、世間話を交えながら「将来、もし介護が必要になったらお金はどう使ってほしい?」「この実家は、誰も住まなくなったらどうしたい?」といった希望を少しずつ話し合ってみてください。親の想いを知ることが、管理の方針を決める大事な軸になります。

ステップ3・法的なセーフティネットの構築

親御さんの意思が確認できたら、ただの「口約束」や「暗証番号の共有」という危うい状態から卒業します。ここで専門家を入れて「家族信託」の契約を結んだり、あるいは「任意後見契約(将来認知症になった時に、あなたを後見人に指定する契約)」といった、きちんとした法的な裏付けを作ります。

このステップ3まで進めておくことが、私たちが考える「本当の意味での安心のゴール」です。

ここまでやっておけば、ある日突然、銀行の窓口で口座を凍結されて途方に暮れることもありません。きょうだいから「使い込んでるんじゃないの?」とあらぬ疑いをかけられて傷つくこともありませんし、税務署から痛くない腹を探られることもありません。

法的な裏付けという強い盾を手に入れたあなたは、余計な不安を抱えることなく、胸を張って親御さんのサポートや日々の生活に専念できるというワケです。

一人で抱え込まず、まずは専門家に相談してみませんか?

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。親御さんの通帳を預かって、日々のやり繰りや手続きをこなしているあなたは、本当に優しくて、ご家族への責任感が強い方だと思います。

だからこそ、「自分がしっかりしなきゃ」「親のために私が頑張らなきゃ」と、一人で不安やプレッシャーを抱え込んでしまっていませんか?

法律や税金、銀行のルールは、年々複雑になっています。親を思う純粋な善意が、見えないルールの壁にぶつかってトラブルになってしまうのは、私たち専門家から見ても本当に辛く、やり切れないことです。

「うちの場合は、家族信託がいいのかな? それともとりあえずノートをつけるだけで大丈夫かな?」 「きょうだいとの関係があまり良くないから、どうやって話を切り出せばいいか悩む……」 「親の認知症が少し進んでいる気がするけど、今からでも間に合うの?」

どのサービスも「はじめてのご相談」は無料

そんな風に、ご自身の状況に当てはめて迷ってしまったら、どうぞ一人で悩まずに私たち専門家を頼ってください。絡まった糸を一緒に整理して、あなたのご家族にとって最適な「交通整理」をするのが私たちの仕事です。

当事務所では、制度の基本的な仕組みや「うちは成年後見と家族信託、どっちの方向性が向いてそう?」といったことについても、「はじめてのご相談」は無料となっています。

まずは「ブログを読んで、こんなことでモヤモヤ悩んでいるんですが…」と、お電話やメールでお気軽にお声がけください。

優しさを確かな安心へ

お金を支払っていただくからには、インターネットの検索だけでは決して出てこない、あなたの家族関係や財産状況に合わせた「あなたのご家族専用の処方箋」をしっかりとお出しすることをお約束します。

あなたのその「優しさ」が、悲しいトラブルや重荷に変わってしまう前に。 今、感じているちょっとしたモヤモヤを、私たちと一緒に確かな「安心」に変えていきませんか? いつでも、あなたからのご連絡をお待ちしております。

家族信託や成年後見については、登記手続きや後見申立てなど、司法書士・弁護士の専門領域となる部分もあります。当事務所では、必要に応じてこれらの専門家とも連携しながら、お客様の状況に合った制度選びや書類作成をサポートいたします。