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なぜ「遺言に書かれていない財産」が問題になるのか
遺言書を作ったからこれでひと安心…と思いたいところですが、実際の相続では「この財産、遺言に書いていないんだけど?」という場面が意外と多くあります。
これは決して珍しい話ではなく、高齢の親が預金を移動させたり、新たにネット証券を開設していたり、保険契約を見直していたりと、生前の変化はどうしても生じるためです。
たとえば、市川周辺で受ける相談でも
・遺言には不動産のことだけ書かれていて預金は記載なし
・ネット銀行の存在を家族が全員知らない
・親が晩年に加入した保険が遺言に登場しない
といった状況はけっこうあります。
この時、相続人の多くが「遺言に書いてない=勝手に決めてよいのか?」と戸惑います。
中には「書いてないから、これは管理してきた自分のものだよね?」と考える人もいますし、逆に「勝手に触ったらトラブルになるのでは」と躊躇して何も進まなくなる場合もあります。
状況が止まってしまう背景には、次のようなポイントがあります。
遺言書は万能ではない
遺言はとても大事ですが、生前の全財産を一つ残らず書ききるのは難しいものです。財産の出入りは毎年起こりますし、認知症が進むと本人にも全ての財産を把握しきれなくなることがあります。
書き漏れによって相続人同士の話がかみ合わなくなる
遺言で指定されていない財産があると、相続人はそれぞれの「正しさ」で意見を主張し始めます。
例えば、管理していた人は「自分が苦労してきた」と言い、別の相続人は「公平に分けるべきだ」と考える、という具合です。
手続きの段取りがわからないと混乱が拡大する
「遺言に書いていない財産はどう扱うのか?」が理解されていないため、相続登記や銀行手続きに進めない状態になってしまうこともあります。
この章で最も伝えたいのは、遺言の記載漏れ自体は特別なことではなく、早めに仕組みを知っておくだけで落ち着いた対応ができるという点です。
次の章では、ではそのような財産をどう扱うのかという具体的なルールを、初めて相続に向き合う読者でもわかりやすく整理していきます。
遺言書に記されていない財産はどう扱うのか
遺言書に書かれていない財産が出てきた場合、まず押さえておきたいのは「遺産分割協議で取り扱う」というルールです。
ここを知っているだけで、相続手続きの流れがずいぶんクリアになります。
遺言書に書いてある部分は、そのとおりに分けることができます。ここは強い効力があります。
一方で、書いていない財産については、遺言の適用ができません。そのため、相続人全員で話し合い、どう分けるのかを決める必要があります。
この話し合いが「遺産分割協議」です。
話し合いと聞くと、「家族で揉めたらどうしよう」と身構える方もいるかもしれませんが、実際には淡々と進むケースも多く、ルールさえ知っておけば慌てる必要はありません。
遺産分割協議が必要になる財産はどんなものか
遺言書に書かれていない財産といっても、具体的にイメージしにくいかもしれません。代表例をいくつか紹介します。
預貯金
遺言作成後に新しく口座ができていたり、定期預金を解約して普通口座にまとめていたりすることがあります。
ネット銀行・ネット証券
家族が存在を知らないことが非常に多いジャンルです。通帳がないため、遺言にも書かれず埋もれやすい部分です。
新規に加入した保険
保険契約は年金暮らしの途中で見直されることがあり、遺言書の内容とズレが出ることがあります。
名義変更や評価見直しが必要な不動産
建物を取り壊した後の土地、買い換えたばかりの物件など、想定外の財産が後から見つかるケースもあります。
こうした財産は、遺言書の記載がない限り、法律上は「相続人全員の共有状態」にあります。そのため、誰がどう分けるのか、きちんと話し合って決めることが求められます。
遺産分割協議が進まないときに起きやすいこと
遺言に書かれていない財産が発見されると、次のような状況になりがちです。
方向性が決まらず、誰も動かない
「これは誰が手続きするの?」
「そもそもどう分けるの?」
こうした疑問が重なると、誰も先へ進めなくなります。
相続人の一人が勝手に手続きしようとして、反発される
善意で動いたつもりでも、他の家族が「相談してない」と感じてしまうと不要な摩擦が生じます。
成年後見制度や相続登記との関係が絡み、余計に複雑化
認知症の親の財産だった場合、後見人の関与が必要になったり、登記の必要性が出てきたりと、事務的な手続きも増えていきます。
この記事を読んでいる方の中には「自分の家もこうなりそう」と心配になってきた方もいるかもしれません。
ですが、必要以上に不安を持つ必要はありません。
次の章では、遺言書に書かれていない財産をめぐる誤解を整理しながら、正しいルールをわかりやすく説明します。
遺言書に書かれていない財産をめぐりがちな誤解
遺言書に書かれていない財産が見つかると、相続人それぞれが自分の経験や感覚で判断しようとします。そのため、誤解が生まれやすく、話し合いが進みにくくなることもあります。
この章では、特に相談で多い誤解を取り上げ、どう整理すればよいのかを解説します。
誤解1 「普段管理していた人のものになる」
たとえば長男が親の預金を管理していた場合、「ずっと管理していたから自分のもの」と考えてしまうケースがあります。
しかし、預金の名義が親である以上、原則として相続財産です。管理していた人の好意や努力とは別に、法律上は相続人全員に権利があります。
ときどき
「口座のキャッシュカードが手元にあるし、自分が使ってもいいのでは?」
という相談もありますが、これは誤解です。
遺言に書かれていない財産は、相続人全員の共有状態であり、勝手に解約したり動かしたりすると、後から不信感につながりかねません。
誤解2 「遺言に書かれていない=遺言全体が無効」
遺言書に抜けている財産があると、「これじゃ遺言が無効になるのでは?」と心配する方が多くいます。
ですが、部分的な記載漏れによって遺言全体が無効になることはありません。
書いてある部分はそのまま有効で、その財産だけ遺言どおりに手続きできます。
つまり、
・遺言に記載のある財産→遺言に従う
・記載のない財産→遺産分割協議で決める
というシンプルな整理になります。
遺言があることで「話し合いをしなくてよい」と思われがちですが、実際には足りない部分はどうしても協議が必要になります。
誤解3 「成年後見人がいれば全財産を完全に把握している」
親が認知症になって成年後見制度を利用している場合、「後見人なら全部把握しているはず」と考える方がいます。
しかし、後見人ができるのは「把握できた財産の管理」であり、「把握していない財産の発掘」までは必ずしも保証されていません。
通帳が家のどこかにしまったまま出てこない、ネット銀行のアカウントがわからないなど、家族ですら知らなかった口座が後から見つかるケースは市川でも珍しくありません。
後見人が悪いわけではなく、財産情報を整理しておかなかったことで起きる問題です。
誤解4 「とりあえず誰かが進めればよい」
遺言にない財産が見つかると、善意で「とりあえず銀行に行って手続きしておこう」と動く相続人が出ることがあります。
しかし、協議前の単独行動は、他の相続人との摩擦が最も起きやすいポイントです。
特に預金の引き出しは、後から「勝手に動かした」と受け止められやすく、相続トラブルの典型的な引き金になってしまいます。
手続きを急いで進めたい気持ちは理解できますが、まずは相続人全員で方向性をそろえることが重要です。
誤解が起こるのは、相続のルールが複雑に見えるからです。しかし、ポイントさえ押さえておけばそれほど難しくありません。
次の章では、そもそも記載漏れが起きないようにするための生前対策について、わかりやすく整理していきます。
記載漏れによるトラブルを避けるための生前対策
遺言に書かれていない財産が見つかると、どうしても相続人同士の認識にズレが生まれやすくなります。
「そんな口座があったなんて知らなかった」
「これ、誰が管理していたの?」
こうした疑問から気まずさが生まれ、協議が止まってしまうこともあります。
しかし、事前に少し工夫しておくだけで、大半のトラブルは防ぐことができます。ここでは、実際に相談で役立つと感じる「準備のコツ」を紹介します。
財産を整理し、定期的に見直す
書き漏れの原因の多くは、財産の把握が不十分なまま遺言を書いてしまうことにあります。
特に最近はネット銀行やネット証券、電子マネーなど、家族の目に触れにくい財産が増えました。
これらは、存在そのものを家族が知らなかったというケースがとても多い分野です。
財産目録をつくるといっても、立派な書式は不要です。
通帳の種類、口座番号、ネット銀行のログイン方法、証券口座の有無など、わかる範囲を書き出すだけでも大きな効果があります。
そして、年に1度でもよいので更新しておくと、遺言書の内容と大きくズレるリスクを抑えられます。
遺言と家族信託を組み合わせる
遺言書だけで全財産をカバーしようとすると、どうしても抜けが出ます。
そこで、最近は生前の財産管理を家族信託に任せ、亡くなった後の承継を遺言で決めるという方法が注目されています。
家族信託は、委託者(親)が受託者(家族)に財産の管理を任せる仕組みです。
例えば、高齢の親が認知症の進行を心配している場合、早い段階で信託契約を結んでおけば、財産管理が安定し、遺言に書ききれない部分のリスクも軽減できます。
信託と遺言はどちらか一つではなく、役割分担させるとちょうどよいバランスになります。
成年後見制度を早めに検討する
認知症が進むと、本人が自分の財産を把握することが難しくなります。
そのため、遺言の作成時点で情報が不完全だったり、後から財産が見つかったりする理由の一つになります。
成年後見制度は、判断能力が下がった方の財産管理をサポートする制度ですが、後見人があればすべての財産を即座に把握できるわけではありません。
ただ、後見人がいれば「どの財産をどう管理していくか」が明確になりやすく、相続人同士が戸惑う場面は少なくなります。
高齢の親が「銀行の通帳がどこにあるか説明できない」「ネット銀行のログイン情報を忘れた」と言い始めた段階で、一度専門家に相談しておくと安心です。
家族で話題にしておくことが最大の予防策
財産情報を整理したり、遺言や信託を作成する際に大切なのは、家族が「知らないままにならない」状態を作っておくことです。
もちろん、細かい金額まで共有する必要はありません。
ただ、「どんな財産がありそうか」「どこに保管しているか」だけでも共有しておくと、遺言の書き漏れによるトラブルはぐっと減ります。
市川でも、「早めに少し話しておいたことで、手続きが驚くほどスムーズだった」という相談者の声は多いものです。
生前対策というと難しく感じるかもしれませんが、実際は小さな取り組みの積み重ねです。
遺言書だけでは守りきれない財産がある
ここまで「遺言書に書かれていない財産はどう扱われるのか」というテーマを軸に、相続の仕組みや誤解、生前対策まで整理してきました。
最後に、押さえておきたいポイントをあらためてまとめながら、読者が次の一歩を踏み出しやすい形に整えていきます。
遺言があっても、書き漏れは起きる
「遺言さえ作っておけば大丈夫」
多くの方がそう考えますが、現実には遺言の内容と実際の財産状況が合わなくなることがよくあります。
預貯金の動き、ネット口座の存在、保険の見直し、不動産の売却や取得など、人生の後半には想定以上に変化があるからです。
特にネット銀行や証券口座は、通帳という目に見える形がないため、家族が把握しづらく、遺言から漏れやすい代表例です。
書いていない財産は相続人全員の話し合いで決める
遺言書に記載されていない財産は、原則として「遺産分割協議」で扱うことになります。
遺言がある部分は遺言に従い、それ以外の部分については相続人全員の合意が必要です。
話し合いと聞くと構えてしまうかもしれませんが、必要な流れを知っておくだけで、手続きは驚くほど落ち着いて進みます。
逆に、協議前に誰かが単独で手続きしてしまうことが、もっとも誤解や不信感を生む原因になります。
誤解を解いておくことでトラブルを避けられる
相続の現場では、次のような誤解がよく見られます。
- 管理していた人のものだと思い込む
- 遺言に記載がなければ遺言自体が無効だと思う
- 後見人ならすべての財産を把握していると思う
これらの誤解は、知識不足というよりも「相続のルールが分かりにくい」ことによって生じています。
しかし、正しい仕組みに触れるだけで、どう判断すればよいかの見通しがぐっと良くなります。
生前対策の工夫が大きな差を生む
遺言書の記載漏れによるトラブルを避けるためには、生前にできる準備が最も効果的です。
- 財産目録をつくり、年に一度更新する
- 遺言書と家族信託を組み合わせる
- 判断能力があるうちに後見制度や生前整理の相談をする
こうした取り組みは、どれも難しいことではなく、小さな一歩の積み重ねです。
市川でも「もっと早く整理しておけばよかった」という声が多い一方で、「準備していたから助かった」という相談もたくさんあります。
最初の一歩は「状況を知ること」
相続は、身近でありながら突然やってくる場面が多いものです。
だからこそ、「遺言に書いていない財産は遺産分割協議で扱う」という基本だけでも知っておくと、心の準備がまったく違ってきます。
もし不安がある場合は、いきなり大きな手続きに踏み出す必要はありません。
まずは財産をざっくり書き出してみる、家族と話題にしてみる、専門家に軽く相談してみる。
その程度の行動でも、相続の混乱をぐっと抑えることができます。
遺言書は大切な備えですが、それだけではカバーしきれない部分も確かにあります。
だからこそ、「遺言+生前整理」という考え方が、家族の負担を減らし、争いを避ける大きな力になります。
この記事が、その一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。

