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市川でも多い「相続放棄の期限切れ」トラブルとは?
相続というと「遺産をどう分けるか」というイメージが強いかもしれません。けれども、相続財産にはプラスの財産だけでなく、マイナスの財産――つまり借金やローン、未払いの税金なども含まれるのです。
実は、市川市内でも「相続放棄の手続きをしないまま3か月が過ぎ、結果的に借金まで相続してしまった」というご相談が少なくありません。たとえば、亡くなった親が生前に多額の借入をしていたことを知らず、相続手続きをしないまま放置していたら、突然債権者から請求書が届いて驚いた…というケースです。
借金を相続してしまう意外な落とし穴
相続人は、被相続人(亡くなった方)の財産と同時に借金も承継することになります。家や土地などのプラス財産に気を取られていると、「負の遺産」が見落とされることも。実際に「自宅は残してもらえると思っていたのに、借金の方が多くて赤字になってしまった」という方もいらっしゃいます。
「3か月ルール」を知らずに後悔する人が多い理由
民法では、相続を知った日から3か月以内に「相続するか」「相続放棄するか」を家庭裁判所に申述する必要があると定められています。これがいわゆる“熟慮期間”です。ところが、このルールを知らないまま期限を過ぎてしまう方が本当に多いのです。「亡くなってすぐに法事や葬儀でバタバタしていた」「財産の調査に時間がかかっていた」という理由で、うっかり過ぎてしまうパターンも珍しくありません。
市川で実際にあった相談事例のイメージ
市川市に住む50代の方からのご相談では、遠方に住む親が亡くなり、相続放棄の手続きが必要だと気づいたのは4か月後。すでに期限を過ぎていたため、家庭裁判所での放棄が認められず、結果として数百万円の借金を背負うことになってしまいました。もし早めに手続きをしていれば防げたケースです。
こうした事例は決して特別なものではなく、「自分には関係ない」と思っている方ほど陥りやすい落とし穴でもあります。
相続放棄の基本ルールをやさしく解説
相続放棄という言葉は耳にしたことがあっても、「どうやって?」「どこに申請するの?」といった具体的なルールは意外と知られていません。ここでは最低限知っておきたい基礎を整理してみましょう。
相続放棄ができるのはいつまで?(家庭裁判所への申述期限)
相続放棄をする場合、相続の開始(通常は被相続人が亡くなったことを知った時点)から3か月以内に、家庭裁判所へ「相続放棄申述書」を提出する必要があります。これが法律で定められた“熟慮期間”です。
この3か月は「短すぎる」と感じる方も多いでしょう。ただし、どうしても財産の内容を把握するのに時間がかかる場合は、家庭裁判所に期間の延長を申し立てることも可能です。気づいたときには「もう期限が切れていた」という事態を避けるためにも、早めに動き出すのが鉄則です。
遺産分割や遺言との関係
ここで注意したいのが、相続放棄は「遺産の分け方を決める遺産分割協議」とは全く別の手続きだという点です。
- 遺産分割協議
プラスの財産をどう分けるかを相続人同士で話し合う - 相続放棄
そもそも相続人ではなくなる(最初から相続に関与しない)
つまり「一部だけ相続する」「借金は放棄して家だけもらう」といったことはできません。相続放棄を選んだら、プラスの財産も含めて一切受け取れなくなるのです。
また、遺言があったとしても、相続放棄をすれば相続人の地位そのものがなくなります。遺言で「長男に全財産を相続させる」と書かれていても、その長男が相続放棄をすれば、別の相続人へ承継されていく仕組みです。
成年後見人がいる場合の扱い
被相続人が亡くなった時点で、相続人に認知症などで判断能力がない方が含まれている場合、その人に代わって「成年後見人」が相続放棄を行う必要があります。成年後見人は家庭裁判所の監督下で動くため、放棄の手続きも裁判所への申述を通して行われます。
市川市でも、高齢化に伴い「相続人が高齢で判断が難しい」というケースが増えてきています。成年後見制度を事前に整えておくことが、こうしたトラブルを未然に防ぐカギになるのです。
気づかずに期限を過ぎてしまう典型パターン
相続放棄の期限は「相続を知った日から3か月以内」。頭ではわかっていても、実際の生活の中ではうっかり過ぎてしまうことが多いのです。ここではよくある3つのパターンを紹介します。
遠方に住んでいて連絡が遅れるケース
相続人が市川ではなく地方や海外に住んでいる場合、死亡の知らせが遅れたり、遺品整理や財産調査に立ち会うのが難しかったりします。
「亡くなったことは知っていたけれど、財産の実態がわからず先延ばしにしていたら3か月が経っていた」というご相談も少なくありません。特に兄弟姉妹の相続では、連絡不足から手続きが後手に回りやすいのが実情です。
相続財産にプラスとマイナスが混在して判断がつかないケース
一見すると不動産や預貯金といったプラスの財産があるため「相続した方がいい」と思い込んでしまうケースもあります。ところが、後から借金や保証債務が発覚し、結果的にマイナスの方が大きいことも珍しくありません。
「とりあえず様子を見よう」と時間をかけているうちに熟慮期間が過ぎてしまい、放棄できなくなってしまうリスクがあります。
認知症の親の代わりに誰も動かせないケース(後見未設定)
相続人の中に認知症の方がいると、本人が手続きを進められません。その場合は成年後見人を選任してもらう必要がありますが、家庭裁判所への申立てから実際に後見人が決まるまで数か月かかることも。
「親が高齢で判断できない状態だったが、後見を付けていなかったために手続きが間に合わなかった」というケースは、現場で非常によく耳にします。事前の備えがあるかどうかで結果が大きく変わる典型例です。
「借金を背負わない」ために家族が準備しておく3つの対策
相続放棄の期限切れを防ぐには、「知識」だけでなく「準備」が欠かせません。ここでは、市川のご家庭でもすぐに取り組める実用的な3つの対策を紹介します。
遺言やエンディングノートで財産状況を明確化する
相続人が慌てる原因の一つが、「亡くなった方の財産がどれくらいあるのかわからない」という状況です。預金通帳や借入の契約書が見つからず、調査に時間を取られてしまうこともよくあります。
そこで有効なのが、遺言やエンディングノートを活用して「財産の一覧」をあらかじめ整理しておくこと。借金や連帯保証の有無まで記録しておけば、残された家族は判断しやすくなります。
任意後見契約や家族信託で判断力低下に備える
相続人や財産管理を担う立場の人が認知症などで判断できなくなると、放棄の手続きが遅れてしまう可能性があります。こうした事態を防ぐには、元気なうちに任意後見契約や家族信託を整えておくのが安心です。
- 任意後見契約
判断能力が低下した後、後見人が代わりに手続きできる - 家族信託
契約に基づき、家族が財産を管理・運用できる
これらを組み合わせれば、相続開始後の混乱を最小限に抑えられます。
相続登記や財産調査を早めに行う
相続が発生したら、早めに財産調査を進めることが大切です。
- 不動産は登記事項証明書で名義を確認
- 預貯金は金融機関へ残高証明を請求
- 借金は信用情報や取引履歴をチェック
特に市川市のように都市部では、複数の銀行やカード会社と契約しているケースも多いため、抜け漏れなく調査することが重要です。相続登記もあわせて進めることで、次世代への承継もスムーズになります。
市川の家族が安心するために今できること
相続放棄の期限切れによる借金相続は、「知っていれば防げたのに…」というケースが本当に多い問題です。市川市でも同様のご相談が増えており、高齢化や家族のライフスタイルの変化(遠方に住む、共働きで忙しいなど)が背景にあります。
相続・遺言・後見は「期限」を意識した準備が大切
- 相続放棄には「3か月ルール」という期限がある
- プラス財産だけでなくマイナス財産も相続対象になる
- 認知症や高齢化で判断できない場合は、後見制度の利用が必要になる
こうした基本を押さえておくだけでも、トラブルの多くは防げます。
専門家に早めに相談するメリット
相続や遺言、成年後見の手続きは、一度でも間違えるとやり直しがきかないものが多いです。自分で調べるのも大事ですが、判断に迷うときは専門家に相談した方が確実です。司法書士や弁護士であれば、家庭裁判所への申述や訴訟を伴う場面にも対応できます。行政書士に相談すれば、相続や遺言に関する基本的な整理や文書作成のサポートを受けられます。
行政書士がサポートできる範囲と相談のはじめ方
行政書士は、遺言書の作成サポート(自筆証書遺言や公正証書遺言の文案作成、必要書類の取得支援)、相続人調査や財産目録の作成補助、成年後見や家族信託の制度説明や準備相談などを受け付けています。
一方で、家庭裁判所に提出する相続放棄申述書の作成や手続代理は司法書士・弁護士の専業領域であり、行政書士が行うことはできません。
市川市や近隣の方で「自分も同じような状況になりそう」と感じたら、まずは行政書士に相談して現状を整理し、必要に応じて司法書士や弁護士と連携して対応するのが安心です。