目次
成年後見人って何をする人?家族が最初につまずくポイント
親の物忘れが増えたり、通帳や印鑑の管理が不安になったりすると、頭をよぎるのが成年後見です。
でも、検索してみると難しい言葉が多くて、早々に疲れてしまう人も少なくありません。
この章ではまず、成年後見人が何をする人なのかを、ざっくりつかめるように整理します。
細かい話はあとで大丈夫です。先に全体の地図を持つだけで、ぐっと読みやすくなります。
成年後見人は何でも決める人ではありません
成年後見人と聞くと、家族の誰かが親の代わりに全部決める制度、というイメージを持たれがちです。
でも実際は、本人の権利や財産を守るための制度で、後見人はその支え役です。
ここで大事なのは、成年後見は本人のための制度だという点です。
家族の都合を優先して話を進めるための仕組みではありません。
たとえば、家族が困っているからといって、後見人が何でも自由に動かせるわけではありません。
むしろ、本人の利益を守るために、できることとできないことがきちんと分かれています。
よくある誤解 後見人になれば口座から自由に引き出せる
この誤解はとても多いです。
親の生活費や施設費を払うため、という気持ちは当然ですが、後見人の行動は基本的に本人のためであることが前提になります。
そして、その管理のしかたは、家庭裁判所への報告なども含めて、一定のルールに沿って行います。
次章以降で詳しく触れますが、手続きは思っているよりもきちんとしています。
そもそも成年後見はいつ必要になるのか
成年後見が必要になるのは、判断能力が十分でない状態になり、財産管理や契約が難しくなったときです。
認知症の診断が出たら即アウト、という話ではありません。
ポイントは、診断名ではなく意思能力です。
例えば、軽度の段階であれば、本人が内容を理解して自分の意思で決められることもあります。逆に、診断がなくても意思能力が低下していれば、契約が難しい場面が出てきます。
この意思能力の見極めが曖昧なままだと、相続や遺言の話も含めて、後から大きなトラブルになりやすくなります。
こんな場面で問題になりやすい
- 親の通帳を預かっている
- 介護施設の入所契約が必要
- 不動産の売却や賃貸の手続きが迫っている
- 相続対策として遺言を作りたいが、判断能力が心配
こうした場面で、家族が良かれと思って動いた結果、後で争族の火種になるケースがあります。
家族が悪いわけではありません。制度を知らないと、そうなりやすい構造があるだけです。
成年後見には種類があります 法定後見と任意後見
成年後見と一口に言っても、大きく分けて2つあります。
法定後見は、すでに判断能力が落ちている状態で、家庭裁判所に申し立てて開始する制度です。
任意後見は、判断能力があるうちに、将来に備えて契約しておく制度です。
検索ではどちらもまとめて成年後見と呼ばれていることが多いので、ここで軽く区別しておくと混乱が減ります。
まずは覚え方だけで十分です
- 今すぐ必要になりやすい
→法定後見 - 元気なうちから備える
→任意後見
これだけ押さえておけば、この先の章で細かい話を読んでも迷子になりにくいです。
家族が最初につまずくのはここです 制度の目的と期待のズレ
成年後見を調べるきっかけは、多くの場合、家族の困りごとです。
口座が凍結されそう、施設費が払えない、相続の準備を進めたい。切実ですよね。
ただ、成年後見は困りごとを何でも解決する万能ツールではありません。
本人の保護を目的とする制度なので、家族の期待とズレたときに、思わぬストレスが生まれます。
例えば、家族が自由に遺産分割の話をまとめたいと思っても、成年後見が関わると進め方が変わることがあります。
相続登記や遺産分割の場面で、後見人の立場から慎重な判断が求められるからです。
この点を知らないまま進むと、家族の中で不満が噴き出し、争族につながることもあります。
年後見人の基本的な義務とは?財産管理と身上監護
成年後見人の役割を一言でまとめるなら、本人の生活と財産を守ることです。
ただし、守るといっても漠然とした話ではありません。実際の義務は、大きく2つに分かれています。
それが、財産管理と身上監護です。
言葉だけ見ると難しそうですが、中身を知ると、意外と日常に近い話だと気づくはずです。
成年後見人の義務はこの2本柱で考える
成年後見人が担う役割は、次の2つが軸になります。
- 財産管理
- 身上監護
この2つを分けて考えることで、後見人が何をする人なのかがはっきりします。
どちらも本人のため、が大原則
どちらの義務も共通しているのは、本人の利益を最優先するという点です。
家族の都合や、話を早くまとめたいという気持ちは、判断基準にはなりません。
ここが、家族が戸惑いやすいポイントでもあります。
財産管理とは何をすることなのか
財産管理は、成年後見人の義務の中でも、特にイメージしやすい部分です。
簡単に言えば、お金や財産をきちんと管理する役割です。
日常的な支払いと管理が中心です
財産管理というと、大きな資産運用を想像するかもしれませんが、実際はもっと地味です。
- 年金や収入の管理
- 介護施設や医療費の支払い
- 公共料金や税金の支払い
- 預貯金の管理
- 不動産があれば、その維持管理
こうした日々の支出を整理し、本人の生活が安定するように管理していきます。
勝手に使えるお金ではありません
ここでよくある誤解が、後見人になれば口座のお金を自由に動かせるという考えです。
実際には、使い道には明確な目的が必要です。
- 本人の生活や療養に必要か
- 本人の財産を減らしすぎていないか
- 不公平な支出になっていないか
こうした点を常に意識しながら管理します。
さらに、家庭裁判所への報告も求められるため、記録を残すことも重要な義務です。
相続や遺産分割にも影響します
財産管理は、将来の相続とも深く関わります。
例えば、後見が始まったあとに、家族の判断で財産を動かすことは原則できません。
遺産分割の話が出たときも、後見人は本人の立場から慎重に対応します。
このため、相続対策を考えている家庭ほど、後見が始まる前の生前対策が重要になります。
身上監護とは生活を支える判断のこと
もう一つの柱が、身上監護です。
こちらは、お金ではなく、生活や暮らしに関わる判断を支える役割です。
医療や介護に関する手続きが中心
身上監護では、次のような場面で後見人が関わります。
- 介護サービスの契約
- 施設入所の手続き
- 医療に関する契約や同意
- 住まいの変更や環境整備
ただし、後見人が医療行為を決めるわけではありません。
あくまで、本人の意思や状況を踏まえた契約や手続きを支える立場です。
本人の気持ちを尊重するのが基本です
身上監護で特に大切なのは、本人の意思をできる限り尊重することです。
判断能力が低下していても、本人の希望がまったく無視されるわけではありません。
- 何を不安に感じているか
- どんな生活を望んでいるか
- これまで大切にしてきた価値観は何か
こうした点を踏まえながら、現実的な選択を積み重ねていきます。
財産管理も身上監護も万能ではありません
ここまで読むと、成年後見人は何でもできるように見えるかもしれません。
しかし実際には、できないことも多くあります。
例えば、本人に代わって遺言を書くことはできません。
本人の財産を積極的に減らすような判断も原則できません。
制度には、本人を守るためのブレーキがかかっています。
それがあるからこそ、安心して使える制度でもあります。
実は大変…成年後見人に課される責任と注意点
成年後見人の義務が財産管理と身上監護だと分かってくると、次に出てくる疑問があります。
それは、結局どれくらい大変なのか、という点です。
家族としては、親のために必要なら引き受けたい気持ちもありますよね。
ただ一方で、制度にはきちんとしたルールがあり、想像以上に責任が重い部分もあります。
この章では、成年後見人に課される代表的な責任と、つまずきやすい注意点をまとめます。
後見人はやりっぱなしでは済みません
成年後見は、始まったら終わりまで放置できる仕組みではありません。
むしろ、開始後の管理の積み重ねが中心です。
家庭裁判所への報告が必要です
成年後見人は、本人の財産状況や支出、管理の内容について、家庭裁判所に報告します。
細かい形式はケースによって変わりますが、ポイントはこれです。
- 何にいくら使ったかを説明できること
- 通帳や領収書など、根拠を残すこと
- 財産を減らす理由が本人の利益に沿っていること
家族の感覚で家計管理をしていると、ここで急にしんどくなります。
後見人としては、記録を残すこと自体が義務に近い仕事になります。
お金の動きは見られている前提です
家庭裁判所が逐一すべてを監視している、という話ではありません。
ただ、後見人は本人の財産を預かる立場なので、説明責任を負うという考え方です。
つまり、後で聞かれても答えられる状態にしておく。
これが後見人としての基本姿勢になります。
本人のためでも、勝手に判断できない場面があります
後見人は本人の代理として動きますが、何でも自由にできるわけではありません。
むしろ、大きな判断ほど慎重さが求められます。
不動産の売却は要注意になりやすい
たとえば、介護費用のために自宅を売りたい。
この判断自体は現実的なことも多いですが、後見が関わると簡単には進まないことがあります。
- 本人にとって本当に必要か
- 他の方法はないか
- 価格や条件は妥当か
- 本人の生活の拠点を奪わないか
こうした点を整理し、必要に応じて家庭裁判所の手続きも絡むことがあります。
家族としては急いで進めたい場面ほど、遠回りに見えるかもしれません。
贈与や名義変更は基本的に難しいと思っておく
将来の相続対策として、子にお金を渡しておきたい、名義を変えておきたい。
こうした発想はよくあります。
ただ、後見制度は本人の財産を守ることが目的なので、本人の財産を減らす行為は慎重に扱われます。
争族回避のつもりが、かえって親族間の不満を生むきっかけになりやすいポイントでもあります。
家族が後見人になると、感情の摩擦が起きやすい
成年後見人には、親族が就くケースもあります。
ただ、家族が後見人になると、制度のルールと家族の感情がぶつかりやすくなります。
他のきょうだいから疑われる問題
後見人がきょうだいのうち一人だと、どうしても疑いの目が出やすくなります。
- お金の使い方が見えない
- なんでその支出が必要なのか分からない
- 自分には相談がない
後見人側は本人のために動いているのに、説明が足りないだけで不信感が積み上がることがあります。
この摩擦が、相続のときに一気に噴き出すケースは少なくありません。
介護の負担と後見の負担は別物です
介護を担っている人が、そのまま後見人も引き受ける。
気持ちとしては自然ですが、負担が二重になりがちです。
- 介護で手一杯なのに、通帳管理や報告書作成まで必要
- 親族間の調整役も担うことになる
- 本人の希望と現実の折り合いをつける場面が増える
ここで疲れ切ってしまう方もいます。
後見人の責任は軽くありません
後見人は、本人の財産を預かり、本人の生活を支える立場です。
そのため、もし不適切な管理があれば、責任を問われる可能性があります。
悪意がなくてもトラブルになることがあります
横領のような話だけではありません。
例えば、領収書が残っていない支出が続く、説明があいまい、親族間の不満が大きい。
こうした状況が重なると、トラブルとして表面化しやすくなります。
後見人に求められるのは、誠実に管理することと、説明できる状態を保つことです。
相続・遺言と成年後見がぶつかりやすい落とし穴
成年後見の話をしていると、必ずと言っていいほど出てくるのが相続や遺言の問題です。
実はここが、家族にとって一番つまずきやすいポイントでもあります。
親の将来を考えて動いているはずなのに、制度の順番を間違えると、思ったように進まなくなる。
この章では、成年後見と相続・遺言が交差する場面で起こりがちな落とし穴を整理します。
認知症と相続の話は切り離せません
相続の準備は、亡くなった後の話と思われがちです。
ですが、実務では、生きているうちの判断能力が大きく影響します。
認知症と診断されたら、もう遺言は書けないのか
これはよく聞かれる質問です。
結論から言うと、診断名だけで一律に判断されるわけではありません。
重要なのは、その時点での意思能力です。
内容を理解し、自分の意思で判断できる状態であれば、遺言が有効に成立する可能性はあります。
ただし、判断能力が低下しているかどうかは、後から争いになりやすい部分です。
成年後見が始まってしまうと、本人が新たに遺言を作ることは、現実的にはかなり難しくなります。
だからこそ、生前対策のタイミングが重要です
まだ話せる、まだ判断できる。
この段階で少しでも整理しておくかどうかで、将来の選択肢は大きく変わります。
成年後見が始まると、相続対策が制限されます
成年後見制度は、本人の財産を守る仕組みです。
そのため、相続対策としてよく行われる行動が、後見開始後は難しくなることがあります。
生前贈与や名義変更が進めにくくなる理由
相続税対策や争族回避のために、子へ財産を移しておきたい。
こうした考えは自然ですが、後見が始まると、本人の財産を減らす行為は慎重に扱われます。
- 本人にとって本当に必要なのか
- 特定の相続人だけが有利にならないか
- 将来の生活に支障はないか
こうした点が重く見られるため、家族の思惑どおりには進まないケースが多くなります。
家族の合意があっても安心できません
家族全員が納得しているから大丈夫、と思っていても注意が必要です。
成年後見では、あくまで本人の利益が基準になります。
親族全員の同意があることと、後見制度上問題がないことは、必ずしも一致しません。
遺産分割の場面で後見人が関わるとどうなるか
相続が発生したとき、相続人の中に成年後見が付いている人がいると、話の進み方が変わります。
後見人は本人の代理として参加します
成年後見人は、被後見人の代理として遺産分割協議に参加します。
その立場は、あくまで本人の利益を守る役割です。
- 早くまとめたい
- 家族関係を優先したい
- 多少の不公平は目をつぶりたい
こうした感情は理解されますが、後見人としては簡単に受け入れられないこともあります。
遺産分割が長期化しやすい理由
後見人が関わると、遺産分割の内容について慎重な検討が求められます。
場合によっては、家庭裁判所の関与が必要になることもあります。
その結果、話し合いが長引いたり、相続登記がなかなか進まなかったりすることがあります。
家族としては、想定外の手間に感じるかもしれません。
成年後見と家族信託は何が違うのか
最近は、成年後見の代わりに家族信託を検討する人も増えています。
ここで大切なのは、どちらが良い悪いではなく、役割の違いを知ることです。
成年後見は保護、家族信託は設計
成年後見は、判断能力が低下した後に本人を守る制度です。
一方、家族信託は、元気なうちに財産管理や承継の流れを設計する仕組みです。
相続や遺言と組み合わせることで、後見を使わずに済むケースもあります。
ただし、身上監護のような役割は家族信託にはありません。
後悔しないために今できる3つの生前対策
成年後見は、必要になったらとても心強い制度です。
ただし前章までで見てきたとおり、始まってからできることは増える一方で、できなくなることもあります。
だからこそ大切なのは、親が元気なうちにできる範囲で備えておくことです。
ここで言う備えは、何か大げさなことをする話ではありません。家族の不安を小さくし、相続トラブル回避にもつながる、現実的な準備のことです。
この章では、初心者の方でも取り組みやすい3つの生前対策を整理します。
生前対策の基本は、後から揉めにくい形を作ること
まず前提として、生前対策は節税のためだけにやるものではありません。
どちらかというと、相続のときに家族が揉めにくい状態をつくることが目的になりやすいです。
- 親が判断できるうちに意思を残す
- 財産の全体像を見える化する
- 困ったときの動き方を決めておく
この3つがそろうと、成年後見が必要になった場合でも、家族の負担はかなり軽くなります。
その1・遺言で意思を残す
相続で揉めやすい原因の一つが、親の意思が分からないことです。
そこで有効なのが遺言です。
遺言があるだけで争族回避につながる理由
遺言があると、少なくとも親が何を望んでいたのかが見えます。
これが家族の気持ちを落ち着かせる材料になります。
もちろん、遺言があっても内容によっては揉めることはあります。
ただ、何もない状態よりは、方向性がはっきりしやすいのも事実です。
判断能力が落ちる前が勝負になります
成年後見が始まるほど判断能力が低下した後では、遺言の作成は現実的に難しくなります。
だからこそ、先延ばしにしないことが大切です。
- 今はまだ元気だから
- そのうち考える
この気持ちが悪いわけではありません。
ただ、相続の準備だけは、元気なうちにしかできないものがある。ここは押さえておきたいところです。
その2・財産の棚卸しで見える化する
次におすすめなのが、財産の棚卸しです。
これが意外と効きます。
財産が見えないと、家族は動けません
相続は、亡くなった瞬間に始まります。
そのとき家族が最初に困るのが、何がどこにあるか分からない問題です。
- 預貯金はどの銀行か
- 保険は入っているか
- 不動産はどこにあるか
- 借入れはないか
これが把握できていないと、相続登記の準備も進みにくくなりますし、遺産分割の話もまとまりません。
まずは一覧表で十分です
立派な資料を作る必要はありません。
紙でもメモでもスプレッドシートでもいいので、次のような形で一覧にしておくだけで効果があります。
- 銀行名と支店名、口座の種類
- 生命保険会社名と証券番号
- 不動産の所在地と固定資産税の通知先
- 年金や収入の種類
- 月々の支出、引き落とし先
ここまでできると、成年後見が必要になった場合でも、後見人の財産管理がスムーズになりやすいです。
その3・成年後見だけに頼らない選択肢を知る
最後のポイントは、制度の選択肢を早めに知っておくことです。
成年後見が必要になる前なら、選べる道が増えます。
任意後見は元気なうちの備えです
任意後見は、判断能力があるうちに将来の後見人を決め、契約しておく仕組みです。
法定後見と比べて、本人の意思を反映しやすいという特徴があります。
家族の納得感を作りやすいメリットがあります
- 誰が支えるのか
- どこまで任せるのか
これを事前に話し合えるので、後からの不信感が起きにくくなります。
家族信託は財産管理の設計に向いています
家族信託は、財産の管理や承継を設計する仕組みです。
相続の流れを前もって整えたい場合に選ばれることがあります。
ただし、介護や医療の契約など、身上監護の役割は含まれない点には注意が必要です。
万能ではないので、何を解決したいのかを整理して選ぶことが大切です。
今できる一歩が家族の安心に
親の老後の不安は、放っておくほど大きくなりがちです。
でも、小さくでも動き始めると、家族の会話が落ち着き、トラブル回避につながっていきます。
まずは、遺言の検討か、財産の棚卸しから。
できるところからで大丈夫です。
※成年後見の申立手続(家庭裁判所への代理・申立書作成)および
後見登記(変更・終了登記)・家族信託登記は、
法律により司法書士の独占業務と定められています。
そのため、当事務所では
申立代理、後見登記・信託登記の申請代行
をお受けすることはできません。
成年後見制度の相談・必要書類の収集支援、任意後見契約書以外の書類作成、家族信託の設計相談などは、
当事務所の業務範囲内で対応可能です。
これらの登記・申立が必要な場合には、
提携している司法書士事務所と連携してサポート
いたします。

