父が亡くなった。相続、何から始めればいい?

父が亡くなった。相続、何から始めればいい?

ご親族が突然亡くなられた。

悲しみに暮れる間もなく、お葬式や役所の手続きに追われ、気づけば心身ともにヘトヘト。

そんな状況にある方は少なくないはずです。

「落ち着いたら相続の手続きをしなきゃいけないのは分かっているけれど、何から手をつければいいのか全く分からない」

まず知っていただきたいのは、「普段から相続を意識して日常生活を送るなんて、ほぼありえない」ということです。親しい間であればあるほど、誰しもが戸惑って当然ですし、それが人間というものです。

今回は、「ご親族を突然亡くされ、不安を抱えている方」に向けて、最初に取り組むべき手続きの流れや、相続登記の義務化など近年の重要なルールを、できるだけ分かりやすくお話ししていきます。

相続手続きの最初の一歩

相続の手続きは、実は「期限があるもの」と「そうでないもの」が入り混じっています。だからこそ、まずは深呼吸をして、全体の流れをふんわりと把握することが大切です。

いきなり完璧を目指す必要はありません。「まずはここからスタートするんだな」という道筋が見えるだけで、心のモヤモヤはずいぶんと晴れるはずです。

よくある相談事例

世間一般でよく耳にする、典型的なお悩みのケースを2つご紹介します。ご自身と重なる部分があるかもしれません。

ケース1 口座が凍結されてお葬式代が払えない

「父が亡くなったことを銀行に伝えたら、いきなり口座が凍結されてしまった。お葬式の費用や、父の入院費を払いたいのに、お金が引き出せずに困っている」というケースです。

これは本当に多くの方が直面する壁ですね。

ケース2 実家の引き出しから遺言書らしきものが出てきた

「遺品の整理をしていたら、封筒に入った手書きの遺言書が出てきた。勝手に開けていいのか分からず、そのままにしている」というケース。

見つけた時はドキッとしますよね。実はこれ、勝手に開封してはいけないという大切なルールがあります。

こうしたお悩みは、決して特別なものではありません。
手順さえ知っていれば、ひとつずつ確実に解決していくことができます。

最初に行う3つの準備

お葬式などの法要が一段落したら、少しずつ相続の手続きに向けて動き出しましょう。まずは、土台となる「3つの準備」から始めます。

遺言書の捜索

真っ先に確認したいのが、お父様が「遺言書」を残していたかどうか。これがあるかないかで、この後の手続きがガラッと変わるからです。 探す場所は、ご自宅の金庫や引き出しの中だけではありません。最近は「公証役場」で作成していたり、「法務局」に預けたりしているケースも増えています。

ご自宅で手書きの遺言書を見つけた場合、絶対にその場で開けないでください。

封がしてあるものは、家庭裁判所で相続人立ち会いのもと開けるルール(検認)になっているからです。 勝手に開けてしまうと、5万円以下の罰則(過料)がかかることもあります。

※公証役場で作った「公正証書遺言」や法務局に預けてあった遺言書なら、この検認手続きは不要

相続人の確定

「家族なんだから、誰が相続人かなんて分かってるよ」と思うんですが、実はこれも法律上しっかりと証明しなければなりません。

具体的には、お父様が「生まれてから亡くなるまで」の戸籍謄本をすべて集めます。結婚や引っ越しを繰り返していると、あちこちの役所から戸籍を取り寄せることになり、パズルのように読み解いていく必要があります。この作業で「実は前妻との間にお子さんがいた」といった、ドラマのような現実が発覚することも。

財産の把握

相続人の確認と並行して、次は「何を」相続するかを調べます。

預貯金やご実家などの不動産といった「プラスの財産」はもちろんですが、住宅ローンやカードの未払い、誰かの連帯保証人になっていないかなど「マイナスの財産」もすべて洗い出します。

もし借金の方が多ければ「相続放棄」という選択肢も検討しなければなりません。

もし借金の方が多ければ「相続放棄」という選択肢もありますが、これには「亡くなったことと自分が相続人になったことを知ってから3ヶ月以内」という厳しい期限があります。

「財産が多くて調べるのに時間が足りない!」という時は、裁判所に期限を延ばしてもらう手続き(熟慮期間の伸長)もあるので、焦らず専門家に相談してください。

近年の重要な相続ルール

相続に関する法律は、ここ数年で大きく変わってきています。昔の知識のままだと「そんなの知らなかった!」と慌てることになるかもしれません。現在の最新トレンドを押さえておきましょう。

相続登記の義務化

ご実家などの不動産を相続した場合、名義変更(相続登記)の手続きが義務化されました。

「自分に相続権があり、その不動産を取得した」と知った日から3年以内に手続きをしないと、10万円以下のペナルティ(過料)がかかるリスクがあります。

「話し合いがまとまらず3年を超えそう…」という場合でも、法務局に「私が相続人の一人です」と届け出る「相続人申告登記」という制度を使えば、一旦義務を果たしたことにできます。

放置せずに早めに対応しておくのが安心です。

遺産分割の期間制限

家族で話し合って遺産の分け方を決めることを「遺産分割」と呼びます。

話し合いで遺産の分け方を決める「遺産分割」ですが、亡くなってから10年を過ぎるとルールが変わります。

「昔、兄さんだけ家を買う援助を受けた(特別受益)」や「私だけ介護を頑張った(寄与分)」といった主張ができなくなり、法律で決められた割合(法定相続分)で機械的に分けるのが原則になってしまいます。

全員が納得すれば10年過ぎても考慮できますが、揉め事を防ぐためにも早めに動くことが大切です。

遺言書保管制度の活用

ご自宅で遺言書を見つけると裁判所の検認が必要だとお伝えしましたが、今は法務局で手書きの遺言書を預かってくれる「自筆証書遺言書保管制度」というものがあります。

この制度を利用して法務局に保管されていた遺言書であれば、家庭裁判所での検認手続きは不要です。相続人などの関係者は、遺言書情報証明書を取得することで、預貯金の払戻しや相続登記などの相続手続きに利用できます。

「もし親が法務局に遺言書を預けていたかもしれない」と思った場合、相続人、受遺者、遺言執行者などの関係者は、遺言書保管所に対して「遺言書保管事実証明書」または「遺言書情報証明書」の交付を請求できます。遺言書保管事実証明書では保管の有無を、遺言書情報証明書では遺言書の内容を確認できます。

放置による3つのリスク

「手続きが面倒だし、兄弟の仲も悪くないから後回しでいいや」

そうやって放置してしまうと、後々大きな不利益を被ることがあります。

預金凍結の長期化

金融機関は、名義人が亡くなったことを知ると、原則としてその口座からの払戻しを停止します。

そのため、相続手続きが完了するまで、被相続人名義の預金を自由に引き出すことはできません。

※もしお葬式代や当面の生活費で今すぐお金が必要な場合は、話し合いが終わる前でも一定額を引き出せる「預貯金の仮払い制度」という仕組みがあります。困った時は銀行の窓口で相談してみてください。

相続税の申告・納付の遅れ

相続税がかかる場合、申告と納税は10ヶ月以内に行う必要があります。

税金がかからないケースも多いですが、「特例を使って税金を安くする」場合も申告自体は必要になるので注意が必要です。 10ヶ月を過ぎるとペナルティの税金がかかってしまうため、「うちって税金かかるのかな?」と不安な方は、早めに税理士さんへ相談しておきましょう。

親族間のトラブル

これが一番悲しいリスクかもしれません。

放置している間に、相続人の誰かが亡くなってしまうことがあります。すると、亡くなった相続人が本来受け継ぐはずだった相続上の地位を、その相続人の相続人が引き継ぐことになります。

こうした状況は「数次相続」と呼ばれます。

その結果、手続きに関わる相続人が増え、最初は兄弟だけの話し合いだったものが、配偶者や子、さらにその先の親族を含む話し合いになることがあります。

数年後には、これまでほとんど関わりのなかった親族にも協力を求めなければならず、話がまとまりにくくなってトラブルに発展するおそれがあります。

専門家へ相談するメリット

ここまで読んで、「やらなきゃいけないことが多すぎて、気が遠くなってきた…」と感じたかもしれませんね。 日中は仕事や家事がある中で、慣れない役所に行ったり、専門用語だらけの書類を読み解いたりするのは、本当に骨の折れる作業です。

そんな時は、相続手続きに詳しい行政書士へご相談ください。

行政書士は、相続人や相続財産の調査に必要となる戸籍等の収集、相続関係説明図や財産目録の作成、相続人全員の合意内容に基づく遺産分割協議書の作成支援などを行えます。

「揉めてしまったら弁護士さん」
「不動産の名義変更は司法書士さん」
「税金の申告は税理士さん」

…といったように、相続は内容によって頼る専門家が異なります。

当事務所では、まず行政書士として戸籍調査や書類作成をお手伝いしつつ、必要に応じて提携する各専門家とも連携いたします。「どこに頼めばいいか分からない」という段階でも、安心してご相談ください。

まとめ

お父様が亡くなられた直後は、誰もが冷静ではいられません。

まずは「遺言書の確認」「相続人の確定」「財産の把握」という3つの準備から、自分のペースで少しずつ進めていきましょう。そして、不動産の名義変更や税金の申告には期限があることを、頭の片隅に置いておいてください。

「何から手をつけていいか分からない」
「自分たちだけで進めるのは不安」

そのように感じたら、いつでもお気軽にご相談ください。

相続人や財産の状況を整理し、行政書士として対応できる書類作成・調査支援を行うとともに、登記・税務・紛争対応が必要な場合には、適切な専門家への相談先をご案内します。